弱さについて

眼病の棟方志功眼を剝きて猛然と彫るよ森羅万象

 

「美というものは自分のもんじゃなくて、みんなのものだ。これはもう驚天動地の、僕の美に対する大きな眼の開きでありましたな。」

「目が弱いわたくしは、モデルの身体の線も見えて来ないし、モデルも生涯使わないで行うこう。こころの中に美が祭られているのだ。それを描くのだ。」

「板画の道で最も肝要なことは、何より板性質の根本を把握すると云うことです」

「板画は間接的な働きに依って作られるものだけに、肉筆では出し得ない効果――直接的なもの以上に韻律の世界を把握して独自の復現的効果を展開する」

「押した一点、置いた一点、大小を考察し、そのちりばめた白地を持たして意味深長。引いた一線、走る一線、長短を考察し、その配置に白地を持たして意味深長」

「自分で右へやろうと思ってやった線なんていうのは、案外自分で思った線はダメなもんです。ちっちゃいもんですよ、刷ってみれば。」

「他力によって融和されている願望というものこそ本当じゃないか。」

飯窪敏彦『写真集 棟方志功』(文藝春秋)より